第29回を迎える国際バッテリーリサイクル会議(以下ICBR)が10日スイス・バーゼルにて開幕した。会場となったのは有名な観光地でもある旧市街の近くに位置する国際会議センターだ。バーゼル旧市街は、中世の街並みを残す非常に美しい建物が並ぶ。会議セッションは11日まで開催され、12日にはワークショップと電池リサイクルプラントツアーが予定されている。
今回のICBRは、600人に近い参加者を数え(半数が初の参加者)、この数年その数は増え続けている。国別ではフランスを中心にベルギー・オランダ・ドイツなど欧州が主流だ。一方で、展示スペースでは、昨年(会場バレンシア)から、中国系の電池リサイクラーやシュレッダー業者の参加が目立っている。基本的に欧州中心のICM会議であるが、ここ数年ICBRでは中国の参加者が急増している。日本勢も頑張って欲しいところだ。
スポンサーには、BAS・ BHS・ Grencore・ Northvolt ・SK TES ・Call2recycle ・TotalEnergies・ LKQ・ Jerell(中国)・YCLEWELL(中国)など。展示会場には、duesenfeld・ northvolt ・Promat ・Stena ・Bebat pro・ envaion ・Umicore ・URT・ Swissrtec・ KOPPERCHEM・ BARRADAS・ Aurubis ・MTB・ jerellなどの顔ぶれが見られる。ブースでは、リサイクル業者やツールメーカーの多くがブラックマス生産と精製度を競っているのが特徴的だ。パトロンは、EuRIC ・EBRA ・RECHARGE などの業界団体。メディアパートナーは、日本から唯一の参加であるMIRUを初め、Recycling International・EUWID・ BATTERY NEWS.com ・Batteries International など9社が参加した。恒例のEVテストドライブはスイスm-eroから超小型EV、Microlinoと電動キックボードが提供された。
初日のプログラムは、キーノートスピーカーに地元スイスの連邦政府環境局から歓迎の挨拶とスイス国内における環境政策の概要説明、Northvolt Materials社長 Emma Nehrenheim氏からは、電池メーカースタートアップとして急成長した同社における電池リサイクルへの取り組みにおけるプレゼンテーションがあった。米国のBlue Whale Materials最高経営責任者(CEO)Robert Kang 氏からは、「バッテリーサプライチェーンににおけるクローズドループは機能するのか」という議題でのトークがあった。米国はリサイクル関連規制が連邦政府レベルで統一されておらず、州政府や自治体レベルで管理されている。そのため国内のリサイクル推進における障壁の一つになっている。一方でこの数年、インフレ抑制法などの導入により、リサイクルを含む電池業界へも多数の民間投資が入っている。
セッション1では、電池および電池リサイクルの市場状況と今後の予測に焦点が当てられた。欧州における電池セル生産計画に伴う生産能力は引き続き増加しており、2030年までの現予測では、数年前の1000GWhから1300GWhまで上昇している。一方で、生産力予測は短期間で上昇しているが、これは電池メーカーによる生産に力拡大への「発表」に基づくもので、実際の生産力を反映するものではないことも留意する必要がある。グローバルの生産力では中国勢が圧倒的に強く、現在の生産トップはCATLとなっている。欧州拠点のコンサルティングAVICENNE ENERGYによると、引き続き電池需要は上昇し続け、向こう10年で30%(量)の成長が予測されており、それに伴う電池材料の需要上昇も必然となる。ブラックマス市場では、英Rho Motionによると、中国が生産量ではトップ、2024年の生産市場動向では前年度からほぼ横ばいとなっている。これはEV用電池が大幅に使用済となるのが2030年以降となることが主要因となっているという。
午後のセッション2および3は、aと b二部に分かれてセッションが行われた。今回多数の優れたプレゼンテーションの申し込みがあり、できるだけ多くを紹介するために、初日からセッションを二部に分けたことが主催者側から説明された。両部門とも焦点は昨年施行された電池規則だ。セッションaでは電池規則下の二次法令によるリサイクル業界への影響、セッション2bでは、電池規則がもたらす自動車業界への影響が主な議題となっている。
セッション3aでは、引き続き二次法令による業界への影響についてのデスカッションが行われ、セッション3bでは、規制がもたらすEUの電池リサイクル業界における競争力への影響が議論のテーマとなった。各セッションの詳細は追って報告する。
Source: IRuniverse株式会社, September 2024